文殿は既に閉館しているので電灯は全て落とされて、非常灯の灯りだけが足元を照らしている。
真っ暗な通路を手探りに進む。
通い慣れた場所のはずなのに何だか薄気味悪い。
眞奉についてきてもらえばよかった良かった。
早く片付けて帰ろう。
はあ、と小さく息を吐いたその時、
「────……たいか?」
ふと、誰かの話し声が聞こえてハッと顔をあげた。
文殿は既に閉館したはず、となると方賢さんだろうか?
だとしたら文殿に灯りを付けて欲しいと頼みたい。神楽の棚の場所は曖昧だし、本を棚に戻す時も灯りがある方が助かる。
転ばないように一歩一歩慎重に歩きながら声がした方へ進む。
「方賢さ────」
「お前、一体何をした?」
非常灯の灯りの下にある二つの人影を見つけ、咄嗟に口を押え棚の陰に隠れた。