「────……君、君」
肩を揺すられる感覚に意識の深いところから引き上げられる。
ゆっくりと目を開けば、相変わらずの無表情で私の顔をのぞき込む眞奉の顔が見えた。
ゆっくり体を起こすと、普段は柔らかい色の電灯が着いているはずの文殿が真っ暗なことに驚いて一気に覚醒する。
遠くで鐘の音が聞こえて慌てて立ち上がった。
「眞奉、いま何時!」
「今聞こえるのが門限の鐘です」
「閉館前に起こしてって頼んだのに……!」
「あまりにもお疲れのご様子でしたので、憚られました」
憮然とした態度でそう言った眞奉に苦笑いを浮べる。
「とりあえず早く戻らないと。眞奉、ここの棚の片付けお願いしていい? 私は神楽の棚に本を戻してくるから」
「かしこまりました」
ありがとう、と早口に伝えて、散らばっていた書物をまとめて胸に抱えた。