「言葉では説明できない奇怪な現象や異常な存在のことを妖というんだ。聞き馴染みがある妖だと、河童、天狗、妖狐なんかは分かるだろう。私たちは、そんな妖たちが住む世界“幽世”と人の世界“現世“の境目“鬼門”に社を立てて統治する仕事をしていた。我々はそれを神の役とかいて神役と読んでいる。簡単に言えば、神職ということになる」
「神職……」
さっきトウダさんが言った「シンショク」というのは神職のことだったんだ。
「本来、神役はシンヤクと呼ぶものなんだが我々の奉仕の特殊性から呼び方を分けるようになって────とそれはまた今度でいいか。とにかく、私や一恍や祝寿は神主、泉寿は巫女として奉仕していたんだ」
「でも、神主さんって、あんな化け物を……妖を退治するようなことをするんですか?」
「普通の神社ならまずそんなことは無い。だが、自分たちが統治するのは幽世と現世の境目にある社────いわば“あやかし神社“だ。人も妖もやって来る。人に善悪があるように、妖にも善悪がある。そんな妖を統治し、導くのが俺たち神職の務めなんだ」
お父さんとお母さんが神主に巫女。
妖を退治する仕事、あやかし神社。
噛み締めるように心の中で繰り返す。
「神職になるのは、“霊力”と呼ばれる言霊を操る力がある家に生まれて育った子供だ。一恍も泉寿もその家に生まれた。そしてその二人から生まれた祝寿も。もちろん、巫寿もだ」
「え……?」