方賢さんは私に見えやすいように自分の腕を差し出した。
「うそ……」
どす黒く変色していたはずの腕はいつも通りの肌色に戻り、禍々しく渦巻いていた靄は跡形ひとつない。
「まさか、ここまでとは」
そう呟いた方賢さんに「え……?」と咄嗟に聞き返す。
小さく首を振った方賢さんがゆっくりと立ち上がる。
「あの、体に変なところとか……」
「なさそうです。寧ろ以前より調子が良い気がしますよ」
手を握ったり開いたりしながら方賢さんは微笑んだ。
「ありがとうございます、巫寿さん。あなたは凄いです」
「いえっ……ほんとに偶然かもしれないので」
「今後が楽しみです」
そう言われて照れくささに身を縮めた。