「巫寿さん、瑞祥さんと合わせて見ましょう」
富宇先生に呼ばれていそいそと立ち上がる。
本巫女役の瑞祥さんの斜め後ろで巫女助勤役の私も舞うこのシーンは、神話舞の中盤で須賀真八司尊と萬知鳴徳尊が現世《うつしよ》の社に降臨し、そこで働く神職達が大慌てでおもてなしをするという場面だ。
優美に舞うのもはもちろんだけれど、突然現れた神様に大慌てになって転びそうになったりする振り付けもある。
普段の神楽舞とは違って面白い動きもあって、お気に入りの場面だ。
鏡に映る瑞祥さんを見た。
一つ一つの動きの繋がりが滑らかで指の先まで美しい。
「そこで、タンタタタン────巫寿さん、もっと滑らかに」
優美に舞うこと以上に大切なものって、一体なんだろう?