「瑞祥、次本巫女のパートやるって富宇先生が」

「お、やっと出番か!」



嬉しそうに立ち上がった瑞祥さん。

私はまだらしく「頑張ってください」と背中を見送る。


私の隣に聖仁さんが腰を下ろした。


「さっきの話、割と本気だよ。神楽部へ入ったらいいのにって思ってる。神話舞の稽古は始まったばかりなのに、巫寿ちゃんここ数日でめきめき上達してる。センスあるんだよ」

「そう、ですか……?」


稽古場は壁一面が鏡になっていて、自分の姿を確認しながら練習することが出来る。

そこに映る自分はいつもぎこちない。

隣でお手本を見せてくれる富宇先生の優美さには程遠いように思えた。


「舞は一生修行だから、完成形なんてないんだ。いちばん大切なのは上手い下手じゃなくて、もっと別のところにあるよ」

「別の……?」


うん、と頷いた聖仁さんはそれ以上は何も言わなかった。

自分で考えるか、見つけるしかないらしい。



"いちばん大切なのは上手い下手じゃなくて、もっと別のところにある"

優美に舞うことが一番大切なことじゃないのだとしたら、他には何があるんだろう。