えっと確か、「その」が吾大神《あがおおかみ》で、「ご神徳」が大御稜威《おおみいづ》だから……。
さらさらと紙に鉛筆を走らせる。
「お、いいじゃん。────先生、これみてください!」
もじゃ髪先生がのそっと立ち上がって歩み寄ると、私が書いた祝詞の紙をじっと覗き込む。
口の中でブツブツと呟いたかと思うと、親指と人差し指で丸を作ってひとつ頷く。
「お、すごい。一発合格だよ」
「一発合格?」
「今日からこの祝詞使っても良いって」
えっ、と目を丸くした。
まじまじと自分で作った祝詞を見つめる。
学校の授業で穴埋め形式で祝詞を作ったことはあるけれど、自分で一から考えて作ったものは初めてだった。
「奏上してみなよ」
「え、ええ……? 大丈夫かな、変な風になったしないかな」
「大丈夫だよ、先生の合格が出たんだから」
自分の祝詞を見つめ、ばくばく波打つ鼓動を沈めようと深く息を吐いた。
胸の前でパン、と手を合わせた。
「────懸けまくも畏き大国主神《おおくにぬしのかみ》よ。恐み恐み謹んで吾大神《あがおおかみ》の大御稜威《おおみいづ》を蒙《かがふ》り奉る」



