「巫寿ちゃんはどんな祝詞を作ってみたい?」

「うーん、どんな祝詞だろ」


授業で習ってきた祝詞を思い出してみる。大祓詞、禊祓詞、火鎮祝詞。

どれも長くて難しい言葉が多く覚えるのにも一苦労した。

言祝ぎの力がコントロールできるようになったとはいえ、言霊にしたい祝詞の本文を覚えていなければ話にならない。


「あ、そうだ。短くて難しい言葉も少なくて万能な祝詞とか……作れないよね」

「できるよ」

「え、できるの!」

「威力はそんなに強く出来ないけどね。語彙数によってより効果が具体的になるから、少ないとどうしても弱まっちゃうんだ」


机の中から紙を取りだした来光くんはそれを私に手渡した。

一行目に「懸けまくも畏き」と見慣れた文字列を並べ、二行目には「恐み恐み謹んで」と記す。



「この二行で作れるよ。一行目の続きには力をお借りしたい神様の名前を。二行目の続きには、どういう力を借りたいのかを書けば完成だね」

「すごい……こんなに簡単にできるんだ」


続き書いてみなよ、と紙を渡されて首を捻る。


神様の名前と借りたい力、か。

色んな場面で使えるといいから、神徳が幅広い神様の名前を入れたいな。

厄除、守護、和合……あと平癒なんかもあればいい。


借りたい力は、それら全般をお借りしたいから、ひとまとめにして「その神徳をお貸しください」にしよう。