「なんか、ろくな事が起きないね」


階段を降りながらそう呟いた来光くんに「はは……」と苦笑いをうかべる。

槍術部では手がボロボロになるまでしごかれ、流鏑馬部では馬から落馬、漢方学部では爆発事件に巻き込まれた。


今日は厄日だったんだろうか。そういえば今年って厄年だったっけ。


そんなことを考えながら遠い目をする。


「流石に究極祝詞研究会では爆発も落馬もないと思うけど。ね、来光?」

「あったら困るよ……」


情けない声でそう言う。


「あはは、ノリケンはオタクの溜まり場だからね。運動部のノリもなけりゃ、爆発も落馬もないよ」

「ノリケン?」

「究極(ノリ)(ケン)究会、略してノリケン。基本的には教室で祝詞の作成をして、完成したら屋外演習場で実践してみたりするよ」


実践、と聞いて先程の爆発が脳裏を過ったけれど、すかさず「まあ、実践までたどり着いた人は滅多にいないけど」と訂正が入る。

辿り着かないって、どういうことだろう?