「豊楽センセー!」


別のテーブルで調薬していた慶賀くんが先生を呼んだ。

今日余った生薬で別の漢方薬を開発していたらしい。


「これ燃やすから、立ち会いして〜」


陶器の小皿に黒っぽい粉を盛ったものを指さす。


「何を入れたんだ?」


豊楽先生の肩越しにのぞき込む。

マッチが上手くつかない慶賀くんは「えっとね」と少し上の空で答えた。


「遠志に硝石でしょー、高麗人参の皮に生姜、硫黄と……あとはなんだったかな」

「硝石に硫黄? ちょっと待て慶賀、」

「お、付いた! えっとー、最後に確か」



火のついたマッチを黒い粉に近付けた。



「そうだそうだ。塩剥《えんぼつ》────」