「普段は寮生活だからいいんだけど、長期休暇の時は帰らなくちゃ行けないでしょ? 実家には帰れないって話したら、神々廻家の別荘を貸してくれて毎年そこでお世話になってるわけ。その時に、ね」
良いとこだよー、と呑気に笑う来光くんにもう何も言えない。
他のみんなからはたまに家や家族の話を聞くことがあるけれど、思い返せば来光くんから家族の話を聞いたことは無かった。
慶賀くんと泰紀くんに振り回されて呆れながらも付き合うその裏には、そんな生い立ちがあったなんて。
「巫寿くん、そろそろ薬包紙に移そうか。いい頃合いだ」
もんもんと考えながら薬研を引いていたせいか、いつの間にか粉末状になった薬が完成していた。