「薫先生は中等部の2年からの編入なんだって。本人も聞かれない限り言うつもりは無いみたいだから、ここで聞いたのは内緒ね」

「でも、薫先生って確か……」


うん、と頷いた来光くんに困惑する。


薫先生の家系、神々廻《ししべ》家は代々続く由緒正しき神職の家系だったはずだ。

神々廻家が管理するお社は「社史」の教科書にも記載されるほど古い神社。神主が世襲制では無いとはいえ、代々その管理を担ってきた一族の名は名門と分類される。

それに薫先生の今の階級は明階一級、薫先生よりも年配の先生でも明階に届いている人を私は知らない。

それだけ実力があれば、幼い頃からこの界隈には慣れ親しんでいるはずだ。


なのになぜ、中等部の、しかも2年生からの編入だったんだろう。


「僕にも、それ以上詳しくは教えてくれないんだよね」

「でもどうして来光くんには話したの? 隠してるんだよね?」

「実は、僕親とは絶縁状態でさ」


え、と固まると、また「あ、ほんとに気にしないで」と片手を上げた来光くんに微妙な顔で頷く。