「────なるほど、巫寿くんは編入生だったのか。……うん、すり潰すのはそれくらい。次、竜眼肉足して」
豊楽先生に付きっきりでアドバイスを貰いながら、薬研をゴロゴロ転がして答える。
「はい、高等部から入学したんです。……このくらいの量ですか?」
「そうそう。しかし、授業についていくのは大変だろう?」
「はい」
ここぞとばかりに即答して大きく頷けば豊楽先生は愉快そうに笑った。
「編入生は滅多にないからな。授業内容に配慮が必要な場合もあるとは思うんだが、とりわけ高等部からの編入はもう数十年なかったからなぁ」
「数十年も……!」
驚いて目を丸くすれば、同じ机で作業していた来光くんが口を挟む。
「中等部への編入も、僕を最後にまだ誰も入ってきてないよ。もう4年経ったけど」
「えっ! 来光くんって編入生だったの?」
「あれ、言ってなかった?」
「言ってないよ!」
これまた驚きの事実に手が止まる。



