「ああそうだ慶賀。三列目の八段目に入れてた、天狗の隠れ蓑の葦《あし》、触ったか?」


教室の後ろは壁一面が戸棚になっていて、小さな引き出しがはめ込まれている。

それを指さした豊楽先生に、慶賀くんは顔をひきつらせた。


「お、俺はなんにも知らない……!」



動揺が声に現れていた。

忙しなく目を泳がせる慶賀くんに、私たちは小さく吹き出した。