テレビ中継でみた競馬場を走る馬のように風をきってそれは美しいフォームで走るハヤテ。

けれど私はそれどころではなく、死に物狂いででその背中にしがみついた。


「巫寿! 絶対手離しちゃ駄目だよっ!」


嘉正くんの叫び声が聞こえる。

けれど先程の比ではないほどハヤテの背中は激しく揺れた。

足が地面に突くたびに体が浮いて、声にならない声を上げる。


「……っ!」


浮かんだ体が背中に戻る瞬間、ハヤテの背中から体がふわりとずれた。

スローモーションのようにゆっくりと世界が反転して、その背中から投げ出される。

駄目だ、地面に打ち付けられる……!


そう思った次の瞬間、地面に叩きつけられる前に誰かの腕が届いた。

私の体を抱きしめるように受け取ると、そのまま尻もちを着く。


痛みは来ず、衝撃だけが体を襲った。


「巫寿さんっ! 大丈夫ですか!」

「……っ、勇逞、さん?」


きつく閉じた瞼をそっと開けると、勇逞さんが私よりも顔を真っ青にして覗き込んでいた。

ハヤテの背中から振り落とされた私を受け止めたのは勇逞さんだった。