眉を釣りあげたその人は私たちを一瞥すると「ちっ」と大きな舌打ちをして、馬の横腹を蹴った。
「見せもんじゃねぇぞガキ! 流れ矢でドタマぶち抜かれねぇように首引っ込めてなッ」
前足を蹴りあげた馬が一気に駆け出した。
馬の揺れなどものともせず、両手を離したその人はぐっと身を乗り出して弓を引く。
次の瞬間、パン!と的が割れた音が響き渡った。
「わっ、中《あた》った……!」
「おおー、すげー!」
「見事だねぇ」
みんなが思わずそう声を上げる。
徐々にスピードを落としたその馬は、運動場をぐるりと回ってまた私たちの前に戻ってくる。
軽やかな身のこなしで馬から降りたその人は、降りた瞬間目にも止まらぬ早さで滑り込むように私たちの前で土下座した。
「す、す、すみません調子に乗ったことを申し上げましたッ!」
「え?」
予想もしなかった行動に目を点にする。
「すみません、こんな僕が調子に乗ってすみません、生きていてすみません……」
潤んだ瞳で私たちを見上げたその人は、本当にあの馬に乗っていた人なのだろうか?



