着物に着替え、居間のような部屋で用意されていた朝食を摂ると、また眞奉さんに連れられて長い廊下を歩いた。


歩いていてわかったけれど、この屋敷には今のところ私と眞奉さん、禄輪さんの3人だけしかいないらしい。

普段は使われていないのか、所々床が抜けていたり柱に蜘蛛の巣が張っていた。


玄関で草履に履き替え外に出た。木々の匂いが深い。うんと森の奥にいるようだった。


「巫寿さま、こちらです」


そう言って案内されたのは、大きな神社のような建物だった。

賽銭箱や鈴がかけて合ったのでそこが神社であることを認識する。

なぜこんな所に……?


不思議に思いながら、眞奉さんにならって草履を脱ぎ、本殿の中へ入った。


祭壇の前に人がひとり座っているのに気がついた。

白い藤の紋様が入った紫色の袴に、白衣を身につけた男性。ひとまとめにした波打つ髪に見覚えがあった。


「あ……」


その声に気がついたのか、男性は半分体を回転させて振り向く。

優しげなタレ目とあごひげに確信を持つ。


「おはよう、よく眠れたか?」

「あ……はい。あの、もしかして禄輪さん、ですか?」

「ああ、私が神母坂禄輪(いげさかろくりん)だ」