それでも負けじと、道端に捨てられた子犬の様な潤んだ瞳で方賢さんを見上げるふたり。
無言の攻防戦が続くこと三十秒────そして。
「ああ、もう。分かりました。今日はいってよし」
疲れきった方賢さんが先に音を上げた。
「シャァァアア!」
ガッツポーズで喜ぶふたりは飛び跳ねてハイタッチをした。
その瞬間、方賢さんが鬼の形相で「静かに!」とふたりを睨む。
「今日怠けたぶん、明日きっちり働いてもらいますからね」
「分かってるよーん!」
「さんきゅ、方賢さん!」
行くぞ、と慶賀くんに手を引かれて文殿を飛び出した。



