言祝ぎの子 ー国立神役修詞高等学校ー



「方賢さんお願いお願いお願い! おねがーい!」


パン!と顔の前で手を合わせた私たち。

いつもの如く呆れ顔で額を抑える方賢さんにもう一押しとばかりに「お願い!」と頼み込んだ。


どうしてこんなに頼み込んでいるのかと言うと、今日の罰則を免除してもらうためだ。


放課後、本来ならば嬉々先生から課せられた「文殿の掃除二ヶ月」の罰則をこなす為に文殿へ集まるのだけれど、今日はそれを見逃してもらいたくて監督者である方賢さんにこうして頼み込んでいるわけだ。


「お願い方賢さん! どうしても巫寿に部活動見学させてあげたいんだ!」

「青春って一度きりなんだ! こんな薄暗い文殿で二ヶ月も無駄にしちまったら、巫寿があまりにも可哀想だよ!」

「っていうか、それなら俺らも可哀想じゃね? 貴重な青春の一ページが全部文殿の掃除になっちゃうんだぜ」

「確かに! そんなのあんまりだ!」



交互にそういう慶賀くんに泰紀くん。

方賢さんは唇の端をぴくぴくさせながら私たちを見下ろす。



「元はと言えばあなた方が校則を破ったからこうなったんでしょう! 可哀想も何もありません!」



おっしゃる通りだ。ぐうの音も出ない。