ふと当たりを見回した。
「どうした? 巫寿」
不思議そうに瑞祥さんが私を見下ろす。
「いえ……外で方賢さんを見かけたのに、そういえばいらっしゃらないなぁって思って」
「今年も出れなかったんだろうなぁ」
頬杖をついてそういう。
その言い方が引っかかって聞き返した。
「神話舞に出る神職は、禰宜頭が決めるんだよ。いわゆる、スカウト制で選ばれんの」
「スカウト制……」
「そーそー。で、方賢さんって在学時代から大和舞の授業も取ってたし神楽部の部長もして、神話舞に出るのを目指してたんだ。卒業して一年目に一度でたってのは聞いたけど、でもそれ以降は厳しいみたい」
いつも文殿で静かにお勤めしている姿しか見たことがないから、まさかそんな一面があったなんてびっくりだ。
それと同時に、あんなに勤勉な方賢さんすら選ばれないような少数精鋭のメンバーに混じることにまた不安が大きくなる。
「言祝ぎを高めなさい」と口酸っぱく色んな人から言われているけれど、やはり「本当に自分で良かったのだろうか?」「失敗してしまうんじゃないか」と言うことばかり考えてしまう。



