その隣にはあまり見かけない顔の男性が座っていた。袴の色からして高位の神職であることはわかる。
周囲にいる人たちに気さくに話しかけていて、豪快に笑うのが印象的だった。
瑞雲宮司よりかは若いけれど、六十代くらいに見える。
「聖仁さん」
隣にいた聖仁さんの腕を軽く叩いて小声で話しかける。
「ん? どうしたの?」
「あの、瑞雲宮司の隣にいる恰幅のいい人は誰ですか?」
目線をやって「ああ」と笑った聖仁さん。
「普段はあんまり前に出てこない人だからね。久宝《くぼう》錦《にしき》権宮司《ごんぐうじ》だよ」
権宮司、というと神主を補佐する立場にある宮司の次に偉い人だ。
「普段の神事は宮司の補佐ばかりだからあまり前には出てこない人なんだけど、根っからのお祭好きでね。開門祭や夏越の大祓の時はすごく張り切って前に出てくるおじさんだよ」
おじさんって、と小さく吹き出す。
ついでとばかりに、その隣が巫女頭で本巫女、巫女助勤、禰宜頭に権禰宜の……と次々に名前を教えてくれる聖仁さん。
ひえ、と心の中で悲鳴をあげる。覚える人が多すぎて目が回りそうだ。



