すす、とまるで宙に浮いているかのように軽やかな足取りで部屋へ入ってきた女性は、桐箱を抱えて歩み寄る。

昨日のことが尾を引いているのか、慌てて布団を飛び出し距離をとった。


「ま、待ってください! 禄輪……さんって誰? それに、あなたのこともよく分からないし、それにここって」

「禄輪はシンショクです。私は禄輪に仕えるジュウニシンシのトウダでございます。こちらは”かむくらの社”でございます。昨晩、私と禄輪がお運びしました」

「昨晩……昨日のあれは何だったんですか? 襲ってきたあれは、あの靄のようなものは。私はどうして狙われたんですか?」

「その事は禄輪がお話するでしょう。まずは着替えを」

「禄輪……さん、は昨日リビングにいた、あの……?」

「左様です。では、お召換えを」


有無を言わさない雰囲気で桐箱から橙色の着物を取り出した眞奉さん。

色々と聞きたいことはあったけれど、どうやら眞奉さんと禄輪さんという方は危ない人ではないらしい。


着物を広げて待っている眞奉さんに、恐る恐る歩み寄った。