差し込む日差しに目が覚めた。

ゆっくりと目を開くと、まずイグサの香りが胸いっぱいに広がり、そして見慣れない和室で眠っていたことがわかった。

きょろきょろと辺りを見廻す。随分と広い部屋で軽く二十畳はありそうだった。

床の間には花瓶が飾ってあったが、埃をかぶっていて花もない。
よく見れば襖も所々に破れが目立ち、至る所から日が差し込んでいた。

私、どうしてここに……?


昨日は確か高校受験で、お兄ちゃんが倒れたって連絡があって、それから。


はっと首に手を当てる。軽く抑えると鈍い痛みが広がる。

あれはじゃあ、夢ではなかったんだ。


膝を抱き抱えて布団に顔を埋める。思い出したかのように手が震えた。


「────巫寿さま。お目覚めですか」


近くの襖に影が射した。

唐突に名前を呼ばれ、ひっと息を飲む。



「失礼致します」


襖がすっと開くと、そこには和服姿の見事な白髪をした30代くらいの女性がしゃなりと座っていた。


「だ、誰ですか……っ! こ、こ、来ないで!」

「名を眞奉(マホウ)と申します。禄輪(ろくりん)より巫寿さまのお世話を仰せつかりました。まずお召かえを、次にお食事を。本殿にて禄輪がお待ちしております」