「他は綺麗に簡潔にまとまってるな。上出来だ」
ぽん、と私の肩を叩いた禄輪さんが目を弓なりにする。
たまらず笑みがこぼれた。
「禄輪禰宜、これも見て貰えますか!」
メガネのブリッジを押し上げた来光くんは突然ノートをばっと頭の上で広げた。
普段とは違うその勢いに、私もみんなも目を瞬かせて来光くんを見た。
「お、おお……?」
若干戸惑い気味にノートを受け取った禄輪さん。
「俺らも見ていいー?」
「うん、皆の感想も聞きたい」
少し誇らしげにそう言った来光くん。
不思議に思いながらも禄輪さんの手元をのぞき込む。
「これはまた、難しい祝詞を作ったな」
懸《か》けまくも畏《かしこ》き、の定型文から始まるそれは紛れもなく祝詞だ。
古語で綴られたノート3ページ分にも渡る祝詞は聞いたこともない言葉がたくさん並ぶ。
はあ、と感嘆の声がもれる。