「さあさあ、挨拶もそこそこにして。もう二人には説明したけれど、改めてお話するわね。集まってもらった三人には、今度の開門祭で神話舞に出てもらいたいの」


うふ、と悪戯が成功したかのように可愛らしく笑った富宇先生。

神話舞、というのが何かわからず首を傾げる。



「開門祭で、御祭神さまである須賀真八司尊(すがざねやつかのみこと)にまつわる神話を舞にして奉納するんだよ」


すかさず聖仁さんがそう説明してくれた。


「メインの役どころを演じるのはまねきの神職さまたちなんだけれど、端役はいつも学生にお願いしていてね。今年は萬知鳴徳尊(ばんちめいとくのみこと)役を聖仁さんにお願いしたくて」



萬知鳴徳尊(ばんちめいとくのみこと)と言うと、まねきの社で御祭しているもう一人の神様だ。

本殿のそばに祠があって、たしか神話では、御祭神さまである須賀真八司尊《すがざねやつかのみこと》の世話役としてお仕えしている美しい少年の姿をした神様だ。


確かに容姿端麗な聖仁さんにはピッタリの役どころだと思う。

あれ、でも聖仁さんは男の人なのに舞を踊るの?


「富宇先生、聖仁さんも舞を踊るんですか?」

「ええ。舞は巫女だけじゃなくて神主も踊るのよ〜。神主が舞うのは大和舞《やまとまい》、男の子は選択授業で選べるの」

「僕の家が仕えるお社は大和舞を奉納する神事があるからね」


なるほど、そんな神事もあるんだ。

みたこともない大和舞だけれど、巫女舞とは違ってまた素敵なんだろうな。