朝の社頭は一日の中で一番心地よい。

空気がまるっと洗われたようなそんな清々しい風が吹き、雲間から差す太陽はことさらに柔らかい。

そんな気持ちの良い朝の社頭に、小鳥の断末魔のような笛の音色が響いた。


「もういい加減にしてよ、ふたりとも!」

「だってさー……」


こめかみを抑えながらそう声を上げたのは来光くんだった。

へにょりと眉を下げて泣き顔を作るのは、いつもの如く慶賀くんに泰紀くんのふたり。



「朝っぱらから小鳥の断末魔みたいな音色聞かされて、迷惑なんだけどッ」

「そんな言い方ねえだろ!せめて猫がしっぽ踏まれた時の声って言えよ!」

「そうだぞ来光、小鳥の断末魔は失礼だ!」

「どっちも似たようなもんだろ!」


そんなやり取りに思わず吹き出す。

疲れたようにため息を吐いた嘉正くんはやれやれと肩を竦めた。



「三人ともうるさい。慶賀と泰紀はせめて教室で練習しなよ。他の学生が雀踏んだんじゃないかって慌てて靴の裏みてるから」

「もう間に合わねぇよ〜……」



ゴールデンウィークが開けて5月の二週目に差し掛かった今日は、連休明け早々に男の子たちは「雅楽」の授業で龍笛のテストがあるらしい。