え、と身を引いた。

知り合いでもないのに、何故一方的に私のことを知っているの?


不審さが募って一歩後ずさる。


「そんなに警戒しないで。俺も神職だから」

「……あ、神職さまだったんですね。ごめんなさい」


相手が神職であることが分かって一気に警戒心が緩む。

ということは、禄輪さんか薫先生の知り合いなんだろう。


「神修に入学したんだってね。おめでとう」

「ありがとう、ございます……?」


見知らぬ人に入学祝いを言われるのは変な感じがしたけれど、とりあえず礼を言う。


「学校は楽しい?」

「えっと……はい。楽しいです」

「そうかそうか」


目を細めてうんうんと頷いたその人。

やはり変な感じがして、怪訝な顔で彼をみあげる。


「なるほど。うん、確かにそうだ」

「え?」



細い目が私を見下ろす。その人は笑っているはずなのに何故か背筋がゾッとした。

その奥の瞳が見えない。


次の瞬間、青信号を知らせる電子音が鳴り響いて、一気に人の塊が動き出す。

強く背中を押されて、よろけて数歩前に出る。


人の流れに押されて、そのまま流されるように前に進む。


「あ、えっ、あの……!」