連休の最終日だけあって、駅の近くにあるショッピングセンターの入口はどこも人で溢れていた。
人にぶつからないように身を小さくして歩く。
信号待ちの人だかりに並んで小さくため息を吐いた。
その時、
「椎名巫寿さん」
突然自分の名前を呼ばれて、俯いていた顔をぱっと上げる。
「はじめまして、椎名巫寿さん」
その声は自分の真隣から聞こえ、弾けるように振り向く。
背の高い男の人だった。見上げるように顔を上げるとひとつの目と目が合う。ひとつしか目が合わなかったのは、その人が黒い眼帯で片目を隠していたからだ。
肩にかかるくらいの長い黒髪、長いまつ毛に縁取られた伏せ目がちな垂れ目、薄い唇。
とても整った顔立ちの人だった。
不思議なことにどこかで会ったことがあるような印象を受けた。
こんなにも整った顔立ちの人なら、絶対に忘れるはずがないのに。
「あの……ごめんなさい、お兄ちゃんのお知り合いですか?」
「はは、違う違う。俺たちは初対面だ。俺が一方的に巫寿ちゃんのことを知って居るだけ」