気まぐれな御神馬に連れられて、見知らぬ社の社頭に辿り着く。

そこから裏の鳥居を通って鬼脈を通り、ひと月前にも鬼脈を通るために訪れた地元の神社へ帰ってきた。

神社があることは知っていたけれど、神修へ出発するまでは一度も訪れたことがなかった。

社史の教科書にも載っていた「ゆいもりの社」。御祭神は結眞津々実尊《ゆまつづみのみこと》で、社紋はクロガネモチの実と葉っぱ。

授業中の小テストに出たので、しっかり覚えている。


通る際は御祭神に手を合わせること、と言う禄輪さんの教えを守り、本殿に立ち寄り手を合わせる。

お昼時もあって参拝客が何人かいたので、社頭で見かけた神主さんには会釈だけして社を出た。



途中で禄輪さんがお見舞い用のお花を買ってくれて、二人で電車に乗った。

ほんの一ヶ月前までは当たり前の光景だった街の景色が今はなんだかちぐはぐな感じがする。


お兄ちゃんや玉じいと過ごした生まれ育った街なのに、今はもうそこに居場所がない気がした。

それがなんだか無性に悲しくてだんだん口数が減っていく私の肩を禄輪さんは黙って抱きしめた。