「俺らに面倒な仕事丸投げして、沖縄観光してたんじゃんかッ!」


慶賀くんはひどいよと半泣きで紫芋タルトをバクバク食べる。



「あはは、だから違うってば。ちゃんとしたシゴト、本庁のクソジジイたちから直接命令されたんだよ。そんなん断れないでしょ」

「それで沖縄に?」

「そ。俺大活躍だったんだから。空亡の残穢を食べた沖縄妖怪キジムナーの修祓」


え、と皆が動きを止める。

それまでの顔つきとは打って変わって、真剣な表情で薫先生を見上げる。


「薫先生、空亡の残穢を祓ってきたの……?」

「うーん、正確に言えば違う。この際だから、空亡の残穢について少し教えてあげよう」


鞄の中から丸まった紙とペンを取り出した薫先生は、太陽のイラストを書いて真ん中に「空亡」と名前を入れる。


「みんなが知ってる通り、12年前に空亡は禄輪禰宜によって体の二十分の一を祓われたことで、自分の体を八つ裂きにした。すかさずそれを当時の審神者が祓ったけれど、それでも倒すことは出来ず残穢は方々に散った」


薫先生は、空亡のイラストに細かい斜線を縦と横に引いた。