次の日。
「くそおおおなんでだよおおお」
首根っこを掴まれて、どこかへ連れ去られていく慶賀くんが寮の窓から見えた。
数秒して泰紀くん、来光くんの悲鳴も聞こえて苦笑いをうかべる。
それもそうだ。
確かに姿を隠せたとしても、匂いは残ってしまう。妖とはいえ元は狐、人よりも数倍は嗅覚がいい。
匂いを辿れば例え見えなくとも捕まえることは容易いだろう。
私は抵抗するのはもう諦めたので、薄手の上着を羽織って寮の下駄箱へ向かう。
既に靴に履き替えた嘉正くんが待っていた。
「あれ、巫寿も辞めたの? 抵抗」
「ふふ。薫先生に挑んでいるようなものだし」
「確かに」
楽しげに笑った嘉正くんと、外に出るとやはり玄関口のそばに管狐のギンちゃんが待っていた。
ギンちゃんは私たちを見つけると、背中に登りやすいようにその場に伏せる。
お礼を言いながら大きなその背中によじ登った。