「どうしようか、この調子で説得しても絶対にここから動かないって感じだね……」

「何を言っても、こてんぱに言い返されちゃうもんね」


二人同時にはあ、とため息をついた。


「そういえば、入内雀ってどういう妖なの?」

「えっと……確か、左遷されたお侍さんの恨みを募らせた魂が雀に取り憑いて生まれた妖だったはずだよ」


恨みを募らせた魂……。

二人してうーんと首を傾げる。


どうにかしてここを離れてもらいたいんだけれど、何を言っても怒ったように言い返される。

せめて、話だけでも聞いてもらえればな。


「……あっ」

「どうしたの?」

「嘉正くん、なにかこう……精神を落ち着けるような祝詞って知ってる?」

「精神を落ち着ける?」


不思議そうな顔をした嘉正くんは顎に手を当てて首を捻る。


「御魂《みたま》を鎮《しず》める簡単な祝詞なら知ってるんだけど、それじゃダメかな」

「上手くいくか分かんないけど、奏上して貰ってもいい?」


よし、と頷いた嘉正くん。

また木の下に戻ると、雀たちは「しつこいぞ!」と私たちを睨んだ。