「ここじゃなくても住みやすいところは沢山あるだろう? ほら、近くに鎮守の森もある」
「ここが住みやすい故ここで良い」
がくりと肩を落とした嘉正くん。
「も、森の方が、キノコとか木の実とか、食べ物のレパートリー多いよ?」
「我らはそのような下等な食い物はもう食わんのだ。ここにおれば春には小松菜、夏にはトマトに茄子に胡瓜、を秋には米を冬には白菜を。年中食い物には困らぬ」
だめだ、何を言っても聞く耳を持ってくれない。
もし彼らが、以前祓った蛇神のように人に害を及ぼす妖なら祓っていただろうけれど、作物が被害にあっただけで人への被害はまだない。
無差別に妖を祓うことは神役諸法度に触れる大罪だ。
だから私たちは説得を試みて見たんだけれど、まさに「ああ言えばこう言う」状態で、お手上げだった。
「巫寿、ちょっと作戦会議」
げんなりした顔の嘉正くんがそう言った。