「────だからね、農家さんも困ってるんだよ」
「我も、左遷された時は右も左も分からぬ土地ゆえ、非常に困ったのだぞ!」
「いや、それは分かるんだけど」
「お主のような小童らに我らの気持ちがわかるか!」
「分かるかー!」「分かるかー!」
広大な畑がどこまでも広がるのどかな田舎の田園風景に、木にとまる数十羽の雀たち。
その木の根元で、私と嘉正くんは深いため息をこぼした。
「ため息とはなんだ!」
「これだから今どきの若者は!」
「ここで一句。かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを……」
雀たちは、私たちの頭上でぴいぴいと鳴いた。
好き勝手に喋る雀、正確には入内雀《にゅうないすずめ》という名前の妖だ。
姿形はよく見る雀だが、顔が人の顔をしていて髷をゆっている。
最初はその不気味な姿にギョッとしたけれど、今はもはやそれどころではない。
小一時間ほど前にここへ着いて、薫先生が使役する管狐から「怪鳥被害を解決すべし」との伝言を受け取った。
よく分からないまま近隣に住む農家さんに話を聞けば、最近畑の農作物が荒らされるようになったのだとか。
それに合わせて夜な夜な人が何かを嘆くような声が一晩中聞こえるようになり、近くの神社の神主に相談したらしい。
どうやら、私たちの課外授業「怪鳥被害を解決すべし」とはこのことのようだ。
そして畑の周辺を見回っていると、あの入内雀たちを見つけたのだ。