「そういや二人とも、薫先生からなんか言われた?」

「いや、まだ何にも」

「私も何も聞いてないよ」


三人も何も言い渡されて居ないらしく、もしかしたら今日も平穏に一日が終わるんじゃ、なんて思った次の瞬間。

うわあっ、と嘉明くんが悲鳴をあげる。

何事かと振り向けば、必死に嘉正くんの背中に隠れながら窓の外を指さした。



「ぎゃーッ」



窓の外に現れた大きな目にみんなの絶叫がこだまする。


「び、びっくりした。落ち着いて皆、薫先生の管狐だ」


からからと窓を開けた嘉正くん。

白いふわふわの毛が風になびいている。


な、なんだびっくりした。

まだばくばくする胸にそっと手を当てて息を吐く。

急に大きな目玉がにこ現れたら、誰でもびっくりするよ……。


「待て、ということは────」


泰紀くんがそう言いかけた次の瞬間、管狐は空いた窓からその大きな前足をつっこんで引き出しの中をまさぐるように動かし出す。

うわあっとまたみんなの絶叫が響いて、蜘蛛の子を散らすように部屋の中を逃げ惑う。