まあね、と肩を竦めた嘉正くん。
嘉正くんにこんなに小さな弟がいたなら、面倒みの良さも納得だ。
「兄さまここ分かんない」
「どこ? 見せて」
勉強を見てあげているらしく、教科書を覗き込んだ嘉正くん。
弟から兄さまって呼ばれてるんだ。
常々、嘉正くんの立ち振る舞いや言葉遣いは丁寧だと感じていたけれど、もしかしたらとても家柄のいいお家のご子息なのかもしれない。
「あれ、お前ら何してんのー?」
入口から顔をのぞかせたのは、慶賀くん達三人だった。
ぞろぞろと中へ入ってくる皆。
その瞬間、驚いた子猫のごとく嘉明くんががたんと立ち上がり嘉正くんの背中に隠れた。
何事かと首を傾げると、嘉正くんは苦笑いをうかべた。
「お、ちっこいのがいると思ったら嘉明じゃん!」
「なに隠れてんだよ嘉明〜」
泰紀くんと慶賀くんにつつかれて、必死に嘉正くんの背中にしがみつく嘉明くん。
「よし、嘉明! これから遊びに行くか!」
「鎮守の森連れてってやるよ!」
その瞬間、ぶわっと涙目になった嘉明くんはワーッと火がついたように泣き出す。
「おいおい、なんで泣くんだよ〜」
「あんたらがトラウマになるような遊びに連れ回したせいだよ」
来光くんが鋭くつっこみ、可哀想にと頭を撫でる。
「なるほどな」と苦笑いを浮かべた。
確かにあのふたりに連れ回されたら、私もトラウマになるかも。