みんなに見守られながら、「やってみ」と薫先生に背を押される。
こくりと頷いて手のひらの小石に意識を集中させた。
体の力を抜いて、祝詞に言祝ぎを注ぎ込む。子守唄を歌う時みたいに柔らかい声を意識して。
さっきと同じようにすればいいだけ。
「……祓え給え 清め給え 守り給え 幸へ給え」
ふわりと手のひらの小石が温かくなり、靄は空気中に溶ける。
そしてたっぷり三十秒数えて、やはり気を失うことは無かった。
「できた……」
どこか他人事のように呟く。
「うん、これもバッチリ祓えてる。やったじゃん」
薫先生にぽんと肩を叩かれて、やっと祝詞の効果を言霊にすることが出来たのだと実感する。
なんだか、出来ないことにあんなにも気を落としていたはずなのに、できたらできたで変な感じ。
でも、どうして急に……?
これまでの授業で力の調整が上手くいったと感じたことは一度もないし、そもそも「上手くいったかも?」なんて思ったことは決してない。
一晩経ってころっと出来るようになるなんて。