「……────鎮奉《しづめまつ》れと 事教《ことおし》へ 悟給《さとしたま》いき 依之《これにより》て 雑々《くさぐさ》の物を 備て 天津祝詞《あまつのりと》の 太祝詞《ふとのりと》の事を以て 
稱辭《ただへこと》 竟奉《をへまつら》くと 申す」

ぱん、と空気を貫く鋭い柏手が響いたその瞬間、目の前で赤々と燃え盛っていた火の玉が冷水をかけられたかのようにぼっと消える。

燻った煙が地面からぷすぷすと上がって、やがてその煙も消えた。


「すっげー!! やったじゃん、巫寿!」


後ろで見守ってくれていた慶賀くんが興奮気味に駆け寄ってきて私の背中をばしばしと叩いた。


「あ、あの慶賀くん、ちょっと痛い」

「わりわり! でもすげぇよ巫寿、いつの間にマスターしたの!?」


おめでとう、良かったね、と賞賛の声を掛けてくれる皆にお礼を言いながら曖昧に笑う。


本当は自分の力では無い、とは言い出しにくい雰囲気だった。






眞奉《まほう》と結びを作った翌日の祝詞実践演習の授業。

白砂の敷き詰められた演習場で、いつものように私は隅っこで薫先生が用意した呪いがかかった小石を祓う練習をしていた。


そして、最近はみんなに迷惑をかけないように授業のギリギリで祝詞を奏上するようにしていたから、授業も終盤に差し掛かった頃、「略拝詞」を半ば諦め気味に唱える。