暫くじっとしているけれども、想定していたことは何も起きず、「え?」と目を瞬かせた。


「あの、もしかして失敗した?」

「いえ。滞りなく結びは交わされました、君」


表情を変えず答えた騰蛇に、どっと肩の荷がおりた。


「なんか、拍子抜けだね。もっと仰々しい感じに光ったりするのかと思っちゃった。騰────」


その時、頭にふと二つの漢字が浮かび上がった。


「眞奉《まほう》……?」

「はい、君」


炎が宿る赤い瞳が私を見つめる。


「騰蛇は、眞奉《まほう》って名前だったんだね。先代の審神者が付けてくれた名前?」

「ええ」

「綺麗な響き……」


眞奉は珍しく、嬉しそうに口角を上げて目を伏せた。


「眞奉って呼んでもいい?」

「もちろんです、君」


今までは巫寿さま、と呼ばれていたから「君」と呼ばれるのはなんだか不思議な感じがする。

少し照れくさい。