けれど、志ようさんの夢を見たり、恣冀という妖を知っていたり、それらは全て自分のこれまでやこれからと繋がっている気がしたのだ。

迷いだらけで「ほんとうにそれでいいのか」と問いかける自分がいて、なのに「それが正しい」のだと言う強い声が胸の奥から聞こえる。



「騰蛇も、私でいいの? 私、審神者でもなんでもないのに」

「私自らが望んだことです。それに、禄輪も審神者ではありません」


たしかに、と肩を竦めた。

騰蛇が姿勢を正した。ゆっくりと、彼女に近付き前に立つ。


すっと息を吸えば、降り始めた小雨のように心臓は徐々に激しく波打つ。



「────我が元に下れ、騰蛇」



炎が宿ったような赤い目でじっと私を見据えた。

全てを見透かして見定めるようなその目が、少し怖い。


「御意に」


騰蛇が静かにそう答えた。