もしかしたら正体が分かるかもしれないと期待した分、分からずじまいで肩を落とす。
この頃ずっと変だ。
あったことも無い人が夢に出てきたり、知らない名前を知っていたり、あたかも自分の記憶のように知らないことを知っている。
自分ではない誰かの感情や記憶を追体験しているような感じだ。
天地一切清浄祓《てんちいっさいしょうじょうはらえ》、十二神使、かむくらの社、志ようさん。
それらに関係するのは、審神者という存在。
「騰蛇……」
「はい」
騰蛇はその場に膝をついた。
そんな様子に思わず苦笑いをうかべた。
「私が言おうとしていることが、分かるの?」
「ええ」
憮然とした態度に思わずくすりと笑った。
「先程申し上げましたように、結びをつくれば私が呪誓で反故にせぬ限り、君《あるじ》から解くことは出来ません。本当に、心をお決めになって宜しいか」
騰蛇の真っ直ぐな目が向けられて、思わず俯いた。
この世界にまだ戸惑っているのは確かで、受け入れられない自分がいるのも自覚している。