「十二神使は他の妖とは違い、妖でありながら穢れを嫌う清廉で潔白な妖です。その動力の源は言祝ぎの力であり、撞賢木厳之御魂天疎向津媛命《つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめのみこと》の元を離れると、源となる力が枯渇してやがて消えます。ですから、審神者の言祝ぎの力を分け与えるのと引き替えに忠誠を誓約します」


審神者の言祝ぎの力を引き替えに忠誠を誓約する……なるほど、十二神使と審神者はそうやってお互いの関係を築くんだ。


妖でありながら穢れを嫌う唯一で清廉潔白な妖。

それだけ騰蛇たちが特別な存在であり、それを使役することを許される審神者が高位な存在であるということだ。


はっと騰蛇を見上げた。


「ねえ、志ようさんはほかの十二神使も召喚したの?」

「ええ。私を含め八匹ほど仕えておりました」

「恣冀《しき》……と呼ばれていたの妖はいた?」


騰蛇は少し黙って考え込むと「いません」と答えた。

いない、か……。

かむくらの社にいた「恣冀《しき》」という名の白髪の妖。


彼の姿を見た瞬間、胸がはち切れるような痛みがして、初めて会う見たこともない妖なのに、私は彼に謝らなければならないと強く思った。

激しく感情を揺さぶられる。


恣冀、名前の通り自由な妖、穢れを嫌う唯一で潔白な妖。

いったい、あなたは誰なの?


騰蛇の話を聞いて、あれは間違いなく十二神使だと思ったんだけれど思い違いだったのかな。