「騰蛇は志ようさんが大好きだったんだね」

「好意があったかどうかは判断致しかねます」

「もう……」


堅苦しい言い方に苦笑いで肩を竦めた。

それでね、と騰蛇を見上げる。



「審神者について知ってることが教えて欲しいの」

「かむくらの社に使える言祝ぎの巫女を審神者と呼びます」

「あ、それ本にも書いてたよ。言祝ぎの巫女って言うのがよく分からなくて」

「言祝ぎの力が強い巫女、という意味です。御祭神さまが神職を選ぶ他の社とは違い、かむくらの巫女は人間が選びます故、そう呼ばれています」


なるほど、言祝ぎ力が強い巫女がかむくらの社の巫女に選ばれるんだ。

でも、ほかの社は御祭神さまが神職を選ぶのに、なぜかむくらの社は人が選ぶんだろう。


「審神者になると、十二神使を召喚する祝詞を撞賢木厳之御魂天疎向津媛命《つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめのみこと》へ奏上します。そこで顕現した十二神使と主従関係を築きます」

「結びを作るんだね」

「ええ。結びを作ることが出来れば、審神者は君《あるじ》になり、十二神使は君の霊力を分け与えられる代わりに命に従い、背かず、確固たる忠誠を誓約します」


霊力を分ける?

首を傾げて聞き返した。