どうしようかな、と書棚を見上げる。
「あ、そうだ。確か────」
背表紙を撫でながら書物の題名をひとつひとつ確かめる。
目当ての一冊を探し当てて書棚から引き抜くと、棚に背を預けてページをめくる。
数日前にこの当たりの棚を片付けた時、本を落としてしまった拍子に目次をみた。それはかむくらの社について書かれた書物だ。
えっと────かむくらの社、創建は780年。社号の"かむくら"は神の御座す場所を示す。御祭神《ごさいじん》に、日輪を司る撞賢木厳之御魂天疎向津媛命《つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめのみこと》を御祭奉る。
平安京に都を遷す前だから奈良時代、長岡京の頃だ。
日輪……確か太陽のことだ。じゃあかむくらの社の御祭神は太陽の神様なんだ。
そのまま続けて読み進める。
神役は言祝ぎの巫女に限り、これを以て審神者《さにわ》とす。審神者、十二神使《じゅうにしんし》を使役し御祭神に御仕え奉り、あまねく社統べし。
言祝ぎの巫女、言祝ぎの力を持っている巫女ということだろうか。
十二神使……?
その言葉には聞き覚えがある。