「よし、じゃあ行くか。巫寿も来るか?」
「あ、私は……行っても出来ることがないし」
「こら、言祝ぎの言葉を口にしなさい」
呆れたように笑った禄輪さん。
「はい」と肩をすくめる。
そこでふと、先日の祝詞のことを思い出した。
「禄輪さん、教えて欲しいことがあって……えっと、たしか天清浄《てんしょうじょう》 地清浄《ちしょうじょう》 内外清浄《ないげしょうじょう》 六根清浄《ろっこんしょうじょう》と 祓給《はらいたま》う────から始まる祝詞、知ってますか?」
驚いたように目を見開いた禄輪さん。
え? と首を傾げる。
「どうしてそれを知っているんだ? 学校の教科書にも載ってないような高度な祝詞だ。扱える神職は滅多に居ない」
「え……」
「天地一切清浄祓《てんちいっさいしょうじょうはらえ》という祝詞だ。天も地上も生きとし生けるものも、全てを清浄にし浄化する効力がある」
天地一切清浄祓、私が奏上したのはそんな名前の祝詞だったんだ。
でも教科書にも載っていない祝詞って……あの時は無意識に頭に思い浮かんだような気がしたけれど、どれかの教科書に乗っていたのを覚えていて、唱えることが出来たのだと思っていた。
けれど、教科書に載って居ないんだとしたら、私はどこでこれを知ったんだろう……?