神役諸法度、学生手帳の中に記載があるのを入学したての頃に読んだことがある。
日本神社本庁が定める規則で、言霊の力を使うにあたって守らなければならないルールが事細かに記載されている。
金曜日の六限にも「神役諸法度1」という授業があるくらい、神職の中では重要な規則だ。
規則を破れば、その破った規則の重さに応じて罰則が与えられる。
確かに嘉正くんの言う通り、もし嬉々先生が同級生を呪殺していたら諸法度に触れる重大な罪だ。
「まあ、火のないところに煙は立たないって言うし、嬉々先生があの場にいたのは事実だ。何らかの関係があるのかもしれないね」
「先生が作ったやべぇ護符が保管されてんじゃねえの? 酒呑童子の首とか」
「妖刀村正とか、生き人形とか!」
馬鹿にしてるだろ!と来光くんが顔を真っ赤にして抗議すると、みんなはケラケラと笑った。
「まあ、でもさー。嬉々先生って、なんか雰囲気が他とは違うっていうかさ。少なくとも、社に使える神職って感じじゃないよな」
たしかに、あの不気味な雰囲気は薫先生や禄輪さん、他の神職の先生たちとは少し違った雰囲気がする。
何を考えているのか分からないあの目が、ずっと苦手だった。