「でもさぁ、ほんとに何だったんだろうね」
本棚に巻物を戻しながら来光くんが呟く。
「薫先生は、僕らには関係の無い場所だから詮索するなって言ったんだよね?」
「うん……」
「大切だけど大切でないものって変な言い方だよね。謎かけみたい」
確かに、薫先生の言い方は曖昧でおかしい。
あれだけ厳重な鳥居と護符の結界に護られたものだ。
本来ならとても大切なものが保管されているはずなのに、「大切だけど大切でないもの」と言った。
一体どういうこと?
「薫先生が関わるなって言ったんだから、もうこの話はこれでおしまい。いつまでも終わんないよ、これ」
嘉正くんは積み重なった書籍に目をやってため息をこぼす。
「でたよ、嘉正の優等生発言!」
「別にそんなんじゃないってば」
「でも、正直気になるだろ? 社の敷地内にあんな場所があるんだぜ?」
その時、突然「あ」と声を上げた来光くんにみんなが視線を注目させる。
「なんだよ来光! なんか知ってんのか?」
「いやいやいや、でもあれは噂程度の話だし」
「なんだよ言えよー!」
いつも通り慶賀くんにヘッドロックをかけられて、来光くんは悲鳴混じりに答えた。