「────正直、あんまり覚えてないんだよなぁ」
あれから数日たった放課後。
一番症状が重かった来光くんが復帰して、久しぶりにみんな揃って罰則の文殿掃除をしていた。
本でトランプタワーを作りながら、慶賀くんがそうぼやく。
「そうだろうよ。だってお前が一番早くに気絶してたからな!」
「はぁ? 俺よりも来光の方が先だったし!」
「やーい、情けない男〜」
「何だとーッ」
ホコリをはらうハタキで殴り合いを始めた二人は、バン!と大きな音にピタリと動きを止める。
振り返ると机に書物を叩き付けたらしい恵衣くんが、鋭い目でこちらを睨んでいた。
「ごめん、恵衣」
固まってしまった二人の代わりに、嘉正くんが謝る。
怖い顔をした恵衣くんは、返事をすることなく別の棚へ歩いていった。
「今はそんなことどうでもいいから。手を動かして」
嘉正くんは呆れたように息を吐いてそう言う。