「きゃっ」


突然のことに悲鳴をあげた。慌ててスマートフォンを手探りで探し当て電源を入れる。画面は冷たく真っ暗なままだ。


「もう……なんでこんな時に」


玄関扉の上にブレーカーがある。きっとそれが落ちたのだろう。

手を伸ばして壁に触れ、ゆっくりと歩く。触れる壁はひんやりと冷たい。

廊下は月明かりさえ届かないのか鼻の先も見えないほどに暗闇が広がる。

1歩踏み出せば床が軋み、腕の皮膚が粟立つ。無意識に息を潜めたその瞬間、

パンッ────と、ガラスが割れる硬質な音が響いた。


悲鳴をあげて弾けるように振り返った。


冷たい風が部屋の中へ入り込んできた。激しくカーテンがはためく音が聞こえる。

家の中の空気が変わる。突然の両肩にのしかかるような威圧感にその場に尻もちを着いた。

一度向けられると二度と忘れられないあの感覚。

廊下を曲がったその先のリビングから痛いほどに感じる禍々しい敵意、鋭利なナイフのような憎悪、剥き出しの────殺意。

咄嗟に手で口を覆った。転がるように壁に擦り寄り背中をつけて息を殺す。

何、何なの……?


『────オーイ』


目を見開いた。


『ドコニイルノ。デテオイデ』


知っている声だ。