「丸々三日間、眠っていたんですよ」
「三日も……」
どうりで頭がずっとぼんやりして、体が重い。お休みの日に眠りすぎた感覚と似ている。
はい、と手ぬぐいが巻かれた氷を渡される。
「泉寿さんの夢を見ていたんですか?」
「え?」
「そう呟いていましたよ、さっき」
そうだ、あの夢。
夢で見たかむくらの社にいた二人の女の人、そのうちの一人は私のお母さんだった。家族写真で写っている姿よりかは少し若かった。
お母さんはどうしてかむくらの社に居たんだろう?
なぜ、「志よう」と呼ばれていた女の人はあんなにも泣いていたんだろう。
あの二人は、なんの話しをしていたんだろう。
分からないことだらけで、でも頭の中はまだぼんやりしていた。
「巫寿さん、あの人に連絡したので、僕は一旦席を外しますね」
「あ、はい」
私が頷いたのを確認した陶護先生は、保健室の入口とは反対方向の別の窓に歩み寄る。
そして、窓を開けると窓枠に足をかけた。
「あの人が帰った頃に戻りますので、僕が戻るまではここで休んでいてください。それから、少しお話しましょう」
「はい、陶護先生」
それじゃあ、と言いかけたその時。
「巫寿〜? 元気にしてる?」
ガラガラ、と保健室の扉が開いた。
入口に立つ人の姿を見た瞬間、「ヒイッ」とまるで化け物にでも遭遇したかのような声を上げた陶護先生。
「あれ、陶護じゃん。そんなところで何してんの?」
流れるように懐から人形《ひとがた》を取り出して放り投げると、人形はポンと音を立てて大きくなり、窓から逃げようとする陶護先生を容易く捕まえた。